カリント日記
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2009年6月16日(火) 自己啓発セミナー勧誘
実はこれを書いているのは2011年12月。
2009年のメールに記録が残っていたので日記にまとめることにした。
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先日、嫁さんが「知人」に「自己啓発セミナー受講」を勧められた。
知人は「とってもいいセミナーがあって○○(嫁さん)には一度受けてもらいたいのよ」という。
けれどもセミナーの受講料は20万円。
金額からして怪しいことこの上ない。
とても受ける気はしないが、知人がしつこく誘うし、それだけの金額を払ってどんなことを教えてくれるのか、逆に興味を持った嫁さんは、「じゃあ、説明だけ」と、その知人についていったそうだ。
普通ならついていく時点で危ないのだが、嫁さんはまったく平気だ。
案内された場所には知人を含めて3人の相手が待ち構えていた。
相手にしてみれば「カモがきた」と言う感じではないだろうか。
「で、どういうセミナーなの?」と嫁さんが聞く。
「それがね・・。うーん、なんと言えばいいのかなあ、詳しい内容は言えないのよ。でも、とってもいいのよ。」
怪しさ満載である。
「例えば?」と嫁さんが聞くと、待ってましたとばかりに三人が話し始めた。
一人目が体験を語る。
「私は人と付き合うのが苦手で。でもセミナーを受けることによって自分で自分の前に壁を作っていたことが原因だとわかったの。それからはとても楽になって、たくさんの人と付き合えるようになったわ」
頷きながら聞く嫁さんではあるが、嫁さんの人付き合いのよさは町内でも評判であり、顔の広さは私もかなわない。
とてもじゃないけれどこんなことに20万円は払えない。
二人目が体験を語る。
「私のところは子どもがとても反抗的で。主人や私とも口を利かなくて。でも、セミナーを受けてからは、私や主人の態度に問題のあることがわかり、それを改めてから子どもとの話をする時間も増えました」
やはり頷く嫁さん。
しかし、世間で一番難しいとされる「高校生の娘」と「父親」でさえ、我が家では二人で映画を見に行く仲である。
これまたこんなことに20万円は払えない。
三人目が体験を語る。
「うちは主人が、何事も無関心で。私や子どものことも。夫婦の中も冷め切っていて。 でも、セミナーを受けてからと言うもの私の態度に誤りのあることがわかり、それを改めたとたん、主人の態度も変わって。今では会話も増えました」
最後まで頷く嫁さん。
このことを日記に書いている時点で言わずもがなである。
やっぱり20万円は払えない。
その他にも、三人は自分たちがいかにこのセミナーで変わったかを長々と話をするが、その彼女たちの話を聞くたびに嫁さんは笑いそうになるのを我慢していたと言う。
嫁さんが普段の何気ない生活の中で手に入れているものを、この三人は嫁さんを惹きつけるために「高い授業料に見合う効果」として、長々と説明しているからだ。
社長に「出世の方法」を教えているようなものである。
「ね、○○さんもどう?私、○○さんのいろいろな話を聞いてこの人が受けたらすごい人になる、って思ってるねん。受けてみない?」
そういわれて嫁さんが言う。
「さっきから聞いている話の内容もすべて今の私にはある。十分すぎるほどに。何も不自由はないし、何も不足していない。今は幸せ一杯で、つらいことも悲しいことも悩みもない。これ以上、何も求めるものがないからセミナーを受けたいという、気にはならない。それより、そんなセミナー受講したら、それこそ主人と喧嘩になるわ。ふふふふ。私の場合はそのセミナーのおかげで不幸になるような気がする。」
結局、知人は勧誘をあきらめ、嫁さんは無事に自宅に戻り、そして私にこの話をしたくて私の帰りを首を長くして待っていたらしい。
「それにしても、話を聞いてるうちに、『この人たちって不幸やなあ。それに比べて私はなんて幸せなんやろう。』って、そればっかり思った。『いやー、聞けば聞くほど、私のうちって完璧やん』って思えたわ。あはははは」
もちろん、この話を肴に二人で酒を飲みながら楽しい夜を過ごした。