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2005/05/05

        2.よう



挨拶ではない。酒も飲んでない。

関西弁で「そんなことようしません」「そんなん、よう言わんわー」という時の「よう」である。
実はこれ、どのように標準語に変換すればよいのかわからず、困った事がある。

社会人2年目の冬、先輩と一緒に地方へ出張し、仕事帰りの居酒屋で、カウンターに座って飲んでいたときのこと、先輩の右隣に座っていためがねをかけた五十歳ぐらいの紳士と一緒に飲み始め、紳士が干支占いについて一通り講釈した後、紳士の娘が成人式で着る晴れ着の話になったときのことである。
(と、ここまで鮮明に覚えているぐらい、私はそのときの「よう」の説明に苦慮したのである)
「今の若い人はあれだね。着物を着ないね」と紳士がいい、私が「そうですね。大体、一人で着物をよう着ませんからね」と答えた。
「え?着物が・・なんだって?」と紳士。
「だから、着物をよう着ないでしょ」と私。
この「よう」である。

「ようできた」であれば「よくできた」でもよい気がするが、「ようしません」は「よくしません」ではないし、「よう言わん」も「よく言わない」ではない。「よう着ません」も同じく「よく着ません」ではない。

では、この「よう」は何なのか?
「そんなことようしません」を標準語で言うと「そんなことできません」だし、「そんなん、よう言わんわー」は、「そんなこと、言えません」になる。
両方とも「できません」「言えません」となり、「しません」「言わない」という単純な否定ではなく不可能を含んだ言い方になる。
そう考えると、この「よう」だけを言い換える標準語は無く、全体として「〜することができない」という文章を構成するための言葉である事がわかり、「よう着ません」は「着る事ができない」となる。

それに気がついていれば紳士との会話ももう少し弾んだろうに、呂律(ろれつ)もままならない私はそんな簡単なことさえ解らず、言葉を変換して伝えることも出来なかった。
何しろその時の私は、かなり「酔う」ていたのだ。



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