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2005/05/05

        4.ほかす



「出しっぱなしにしてたらほかすで!」と、子供のころ良く親にしかられた。
「ほかす」とは「捨てる」という意味だ。関西人ならごく普通に使う言葉であるが(とはいえ、最近は使う人も少なくなった)、関西圏を出ると全く通じなくなる。

「言わへん」「でけへん」など標準語の語尾が変化したような基本的なものはもちろん、「あかん」「ようせん」など独特の言葉、さらには地元民でも今では殆ど使うことのない「でんがな」「まんがな」でさえ、既に全国的に認知されているにもかかわらず、日常会話の中で使う機会もかなりあると思われる「ほかす」は他の地方での認知度はきわめて低い。

大阪出身の友人が東京の友人と話をしたときのこと。
「ああ、あの紙袋やったら、ボロボロになったし、汚かったからほかしたで。」と大阪人が言う。
「へえ。やっぱり大阪の人ってモノを大事にするんだね。あんな紙袋を取っておくなんて。」と東京人。
「いや、せやから、ほかしたって」「え?保管してあるんでしょ?」

「保管する」の関西弁が「ほかす」だと東京の友人は思っていたらしい。これほど正反対の意味になるのも珍しい。
それほどディープな言葉だろうか?

「ほかす」と良く似た単語に「ほる」というのがある。
「ほかす」は大阪、「ほる」は兵庫で主に使用されているようだが、ともに「捨てる」という意味である。
そもそもの語源はなんだろうかと考えてみた。
この「ほかす」や「ほる」に近い言葉としてよく使われる関西弁に「はよせな、ほっていくで」とか「ほったらかしにして」などがある。
こられの言葉にはいずれも「途中で投げ出す。置いて行く。捨てる。」というようなニュアンスが含まれており、共通する文字は「ほ」である。

これらのことから「放置する」「放り出す」の「放」が「ほ」となっていると推測できた。

調べてみると「ほかす」とは「放下す」と書いたようだ。
漢字にするといかにも「捨ててしまう」という感じがするではないか。

ちなみに、「ほかす」が「捨てる」なら、「片付ける」は何と言うか。
「なおす」である。
だから、冒頭の親のセリフの続きも「読んだ本、ちゃんとなおさなあかん!」などとなる。
東京の友人がそういわれれば、きっと「え?この本のどこを修理するの?」と聞き返すだろう。




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