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2005/12/11

        7.一所懸命


ほとんどの人が「一生懸命」だと思っているし、私も話し言葉のときは「イッショウケンメイ」に近い発音になっている。
でも、本来は一所懸命。

昔、テレビ番組で司会者が視聴者からの葉書を読み「えーと。『僕もそれに一所懸命です』一所懸命?バカじゃねーのかこいつ。一所懸命だってよ。ひとつのところで懸命になってどうすんだよ。一生懸命だろう!」と話しているのを聞いて、「バカはお前のほうだ」とテレビに向かって突っ込んだことがある。

「ひとつのところ」ではなく、「一生=生きている間」ともなれば大風呂敷もいいところであり、かなりうそ臭い。
「一生」という長い期間に対して「がんばってます」といわれても、ピントがぼけてしまって、あまり努力している感じが伝わらない。
懸命さが伝わってこないのだ。
そもそも、生きていることに命を懸けるのは当たり前のことであり、そこら辺の虫だって懸命に生きているのだから、万物の霊長たる人間がことさらに、「一生、命を懸けます」っていうのは、「普段はその気が無くても生きていけるんです」と宣言しているようなもので、恥ずかしいことこの上ない。

また、一生懸命と一所懸命を使い分けている人もかなり多いようだ。
使い分けの根拠が「時間」と「場所」だったり、「長期的なもの」と「短期的なもの」だったり、いろいろあってそれはそれで面白い解釈だが、やはり「一生懸命」には違和感がある。

ひとつのところに命を懸ける。
多くを望まず、多くのところに手を出さず、自分のできるところで心血を注ぎ、そしてそれに命を懸ける。
それが一所懸命。
だからこそ、価値があり、美しく、尊いのだ。



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